パソコン制御ニッケル水素充電器の、容量測定値のslotによる偏差の測定(付:eneloop、evoltaの電池ごとのバラツキの評価)

eneloopを充電、放電、と、評価していたときは、電池ごとのバラツキの少ない電池だなー、と関心していました。
測定値の誤差かあ、、、というような違いしか現れないので、まあ、いいかな、と思っていました。
電池を4本同時に放電して現れる数値の違い、つまり電池ごとの容量のバラツキは、回路間の、バラツキ以内に納まっていたので、まあ、そんなもんかあ、と思って、満足していました。

ところが、evoltaという電池を充電してみて、、、放電したときの結果と、eneloopの放電の結果を比べてみましょう。


明らかに、eneloopより、電池ごとのバラツキが大きいことがわかると思います。

で、別途evoltaの充電効率を測定してみたときのこのグラフ(2000mAh充電して、放電)、ついでに、eneloopの同様のグラフもつけて、


グラフが、見事なまでに重なっています。また、拡大図のほうをみてもらっても、電池ごとの差がそれほどないのが分かります。
evoltaとeneloopと、ほぼ同じ回路ごとの偏差がみてとれます。つまり「slot0:赤、slot3:緑、slot4:青、slot1黄」となり、その間隔もよく似ている。

つまり、満充電後の、放電による電池の容量の測定値のばらつきは、満充電検出のタイミングで発生するのであって、2000mAhを充電したときの結果の違いは、パソコン制御ニッケル水素電池充放電器の、回路ごとの偏差がほとんどを決める、ということだと思います。

ついでに、驚愕すべきは、先ほどの通常にeneloopを満充電したあとの放電特性の図の拡大図と、この2000mAhを充電して放電したときの拡大図が、非常に近い、といいうことです。つまり、eneloopはこれほどまでに、特性(特にここでは容量面)がそろっている、と。

で、また話がちょっとそれますが、先ほど、「電池の容量の測定値のばらつきは、満充電検出のタイミングで発生する」と書きました。
パソコン制御ニッケル水素電池充放電器は、「寸止め充電」が、売りです。しかしながら、寸止め充電も怪しい、と思われるかも知れません。
(eneloopの通常(寸止め)充電したあとの放電グラフは既に示したので、そんなことはないことは、ここまででも推測できますが。)

で、寸止め充電した後に、強制的に460mAh充電し、その後放電したグラフをのせます。(右側に再掲で、通常の満充電後の放電を載せます。)


寸止め充電した後、強制的に460mAh充電したということは、その電池は、ほぼ満タン充電されているといってよいと思います。
で、寸止め充電時と同じ傾向をあらわしていますね。

つまり、ここでの言いたいことは、寸止め充電は、個別の電池の残り充電できる容量に対して、かなり揃ったところで寸止め充電している、ということです。

では、話をもどして、本論の、「放電容量測定値の回路ごとの正確な偏差を求める。」に戻りましょう。

目次:
  1.測定のバラツキと、回路偏差の概要
  2.実験内容概要と統計処理
  3.実験内容と測定結果
  4.結論!回路間偏差
  5.eneloopとevoltaの容量のバラツキ
  6.まとめ


1.測定のバラツキと、回路偏差の概要

「満充電から放電したときの放電容量は、満充電のタイミングが多くを決めてしまう。」ことは既に述べました。もちろんeneloopは、この違い自体が少ないことも既に述べましたが、本稿では、その影響を排除すべく、実験します。

つまり、「2000mAh充電したときに放電できる容量」を、実験の測定内容とします。

さて、ここから、本題。

その条件で測定した場合の、一例として、データをお見せしましょう。もちろん、同じ電池セットの測定で、同じ電池は、同じslotに入れています。
(唯一、1000mAh充電して、、、というのが、実際に実験したデータと違うところです。)

放電容量測定値の1例

slot0 slot1 slot2 slot3
x月y日測定結果 825mAh 820mAh 825mAh 823mAh
a月b日測定結果 829mAh 824mAh 828mAh 826mAh

傾向は見て取れるでしょうか。x月y日測定結果は、a月b日の測定結果より、すべて若干少なめ(3mAh〜4mAh)に計測されています。
つまり、slot間のずれは、同じ1回の4本そろえて充電するときに、その違いが相対的に現れる、ということです。
これは、電池を充電する際の、温度の違い、それまでの(特に直前の)充電放電内容が影響していると思われます。つまり、同時に測定した結果でないと意味がないということです。同電池を、順番に、違うスロットに入れて充電、放電しても、所詮、スロット間の偏差はまったく測定できません。
これは、根本的に一番重要な点です。後で、データを統計処理をする際も、これが根本的な話になります。

さて、「2000mAh充電したときに放電できる容量」を測定し、しかも、「回路間の相対的な偏差」を問題にし、「4本同時に測定しなきゃ意味がない。」という場合に、現れる偏差(誤差も一部含め)以下の要素があります

 1.回路の偏差
 2.電池の充電効率の偏差

1.回路の偏差

本充放電器の充放電部分の回路を示します。

これらの回路が4つあります。
で、充電回路(右側を中心に説明しましょう。)
充電した容量を測定するのは、1秒おきに、0.125Ωの抵抗の両端にかかる電圧を測定することにより、測定しています。測定値の偏差として、直接的に効いてくるのは、この抵抗の誤差になります。8本の1Ωの金属皮膜抵抗(交差1%)を並列につないでるので、非常に少ないのですが、それでもそれなりの違いとなります。(放電回路のほうは、1Ω2本並列で、0.5Ωなので、誤差は、大きいと思います。

他に影響するのは、実際に充電される電流の値の違いです。この原因は、(同じく充電回路の)電流制限抵抗や、トランジスタのバラツキ、トランジスタの温度の違い、トランジスタのベース電流の違い(1kΩの炭素抵抗が最も影響する?)というところでしょうか。
ところで、実際に充電される電流自体が、容量測定値の偏差を生むのではありません。実際に充電される電流の違いにより、電池の性能測定に影響を及ぼす、ということです。本測定の目的は、「回路間の偏差を得ることにより、最終的に電池の性能のバラツキを測定する。」ですから、本当の充電された容量を知りたいわけではなく、まったく同じ回路で、同じ外部条件で、測定した場合に、どういう値が得られるか、ということなので、このバラツキは、補正するべきでしょう、というか、どんぶり勘定で、入れてしまっていいでしょう。逆に、そうするべきだと言えますし、そうしないとすると、測定はもっと大掛かりになります。

なお、当然ですが、「充電回路による、偏差」と「放電回路による偏差」があります。
例えば、本実験のように、2000mAh充電して、それを放電した容量を測定する場合、その測定値には両方の合計が効いてきます。
ところが、もっとより重要な、というか、ほとんどの場合、例えば、「満充電してから、放電して容量を比較する。」とか、「満充電してから1週間放置後の残容量を比較する。」場合は測定偏差という意味合いでは、「放電回路による偏差」のみを考慮しなければなりません。
通常に測定するだけでは、両方の合計が得られるだけなので、工夫が必要です。

(ちなみに、余談というか、結構重要な点なのですが、充電回路の0.125Ωの抵抗と、電池のプラス極の間に、「ケース内と外の電池ボックスを結ぶ充電電流を流すケーブル」という、寄生抵抗があります。放電回路のほうは流す電流も多くないので、それほど問題になりませんが、充電回路のほうは影響があります。つまり、充電器の蓋を開けて回路のメンテナンスをするために、ケーブルを曲げ伸ばししただけで、この値は変わってきます。普段もこのケーブルは触らないようにしなければなりません。最後に蓋を開けたのは、去年の年末ぐらいだったと思いますので、それ以前のデータは、変わってきちゃいます。といいつつ、(ちょっと先回りしますが)本実験の結論で得られたデータで、過去のデータを解析したところ、この値の変化は、それほど大きくありませんが、、、無視できない値ではあります。)

2.電池の充電効率の偏差

普通に測定した場合に得られる偏差は、1の回路の偏差と、この電池自体の充電効率の両方になります。
これは差し引かなければなりません。これも、工夫が必要です。(前の充電回路による偏差と放電回路による偏差ほど工夫しなくても大丈夫ですが。)
ただ、この値を測定して得られたとしても、それは、その電池セットの偏差でしかありません。次節以降での実験をすべて行わなければこの値は求まらないので、電池ごとにこの値を求めるのは無理があります。
この値はおそらく、小さいことが予想されるのは、前に示したグラフからもわかります。また、本実験の結果、小さいことは測定で得られるでしょう。従って、別の考え方としては、普通に電池の容量測定をした場合には、この偏差も含んだものが測定された、と受け取るのがよいかと思います。



2.実験内容概要と、統計処理

前項までで述べてきたことを整理すると、
2000mAh充電し、その放電容量の測定値として使うにあたり、以下の2点が重要であるということです。
 同じタイミングの4つの電池の相対的な差しか利用できないこと、
 偏差には、「充電回路による偏差」「放電回路による偏差」「電池の固体ごとの充電効率の偏差」の3つがあること。

さて、1つめの、「同じタイミングの4つの電池の相対的な差しか利用できないこと、」ですが、

再掲「放電容量測定値の1例」ですが、

slot0 slot1 slot2 slot3
x月y日測定結果 825mAh 820mAh 825mAh 823mAh
a月b日測定結果 829mAh 824mAh 828mAh 826mAh

これの数値から、単純化して、以下のようにします。


同時に充電した全てのslotの放電容量平均からの乖離率

slot0 slot1 slot2 slot3
x月y日測定結果 0.21% -0.39% 0.21% -0.03%
a月b日測定結果 0.27% -0.33% 0.15% -0.09%

この数値を、使うこととします。こうする目的は、繰り返し言いますが、「充電時、放電時の温度の影響や、直前の充放電状況からの影響を逃れること。」です。

2つめの、
 偏差には、「充電回路による偏差」「放電回路による偏差」「電池の固体ごとの充電効率の偏差」の3つがあること。
については、かなり、ややこしいですが、説明してみましょう。

話を単純にして、充放電器に、2つのスロットがあり、電池も2本である。としましょう。

この場合、同じスロットで充放電した場合の2通りと、充電時と放電時で電池を入れ替えて行った場合2通りの4通りを行います。

つまり4通りのテストを行い、それぞれの測定値(上記の乖離率)を、以下のように表すことにします。

テストケース番号 slot0測定結果(放電時) slot2測定結果(放電時)
AA 充電時配置A、放電時配置A AA0 AA1
BB 充電時配置B、放電時配置B BB0 BB1
AB 充電時配置A、放電時配置B AB0 AB1
BB 充電時配置B、放電時配置B BB0 BB1

(配置Aとは、slot0に電池X、slot1に電池Y、ということで、配置Bはその電池を入れ替えたパタンです。

さて、求めたい数値を以下のように定義します。

slot0 slot1
充電回路による偏差 J0 J1
放電回路による偏差 H0 H1
電池X 電池Y
電池の充電効率偏差 X Y

これらの値は、当然0%近辺にばらつく値ですので、本来は掛け算なのですが、足し算にしてしまい、以下の連立方程式が成り立ちます。
  1. J0 + H0 + X = AA0
  2. J1 + H1 + Y = AA1
  3. J0 + H0 + Y = BB0
  4. J1 + H1 + X = BB1
  5. J0 + H1 + Y = AB0
  6. J1 + H0 + X = AB1
  7. J0 + H1 + X = BB0
  8. J1 + H0 + Y = BB1

左辺は求めたい値、右辺は、測定値ですね。

で、単純な連立方程式のように見えますが、これ、一般的には解がない、連立方程式です。
例えば、1の両辺から3の両辺を引くと、
  X - Y  = AA0-BB0
4の両辺から2の両辺を引くと、
  X - Y = BB1-AA1
ということで、矛盾する内容があるからです。 

ここで、上記の条件以外に、求めるべき値としての制約があります。それは、
  X + Y = 0
  J0 + J1 = 0
  H0 + H1 = 0
各スロットからの偏差を求めたいわけですから当然ですね。

つまりは、この計算は、「変数より、式の数のほうが多い、連立方程式を、統計手法により解く。」
ということになります。

具体的な計算方法は、「偏差の乖離の二乗が最小になるように解く。」ということになります。(二乗じゃなく、絶対値を使っても、ほぼ同じような値がでますが、収束させるための設定が面倒なので、手抜きです。)

おおおおお、数学の理屈は、俺にはわからん、、、、無理かも、、、

とめげそうになりますが、現代は便利ですねー「Excel のソルバー」というツールを使えば、いとも簡単に解けてしまいます。

クランキーコンドルや、レッツのデータを、何年もに渡って採取し続け、Excelで解析し続けた、「数学できない人向けの統計処理」に関する経験が、ここで、生かされます。素晴らしいことですね(笑)


3.実験内容と測定結果

以下にテスト内容と、測定された素データを示します。素データの内容は、読み飛ばしてもらって問題ないと思います。
ここでは、「こんな実験やったんだー。」ということを理解してもらうのが目的であり、数値は参考程度に見てください。

で、ほぼ同じ実験を、eneloop-Rのセット2と、evoltaについて行いましたが、eneloopの全、素データを示します。
 テスト前には、電池を放電して、30分休憩してテストを開始しています。
 また、充電、放電、の間は、すべて30分の休憩を置いています。
 テスト順序というのが、テストを実施した順番です。
 つまりこういうこと
   テスト順序にある、1,2,3を消化
   4の充電だけが終わった後、電池の配置を変え、4の放電を行う。
   5,6,7を消化
   以下略。

slot0 slot1 slot2 slot3
テストケース(順序もあらわしている) 充電時電池配置パタン 放電時電池配置パタン 充電量測定値(mAh) 放電量測定値(mAh) 充電量測定値(mAh) 放電量測定値(mAh) 充電量測定値(mAh) 放電量測定値(mAh) 充電量測定値(mAh) 放電量測定値(mAh)
1 0 0 2000.59 1652.32 2000.59 1642.19 2000.48 1651.11 2000.58 1646.39
2 0 0 1000.00 825.21 1000.10 819.32 1000.54 824.44 1000.19 822.84
3 0 0 1000.57 827.74 1000.40 822.19 1000.49 826.69 1000.13 824.25
5 1 1 2000.29 1657.20 2000.04 1646.72 2000.60 1656.60 2000.55 1651.01
6 1 1 1000.15 827.41 1000.43 822.79 1000.46 827.61 1000.46 825.35
7 1 1 1000.04 826.17 1000.38 821.42 1000.29 825.96 1000.09 823.28
9 2 2 2000.28 1655.01 2000.61 1645.28 2000.18 1653.85 2000.63 1648.79
10 2 2 1000.15 825.20 1000.25 820.49 1000.42 825.13 1000.50 822.71
11 2 2 1000.48 828.98 1000.04 823.73 1000.30 828.16 1000.51 825.80
12 2 2 2000.57 1657.03 2000.50 1646.75 2000.24 1655.33 2000.52 1650.65 電池の入れ替えするとき寝てたため、予定外
14 3 3 2000.59 1650.24 2000.37 1640.09 2000.44 1649.15 2000.10 1643.36
15 3 3 1000.56 824.92 1000.64 819.73 1000.37 823.83 1000.15 821.53
16 3 3 1000.12 828.48 1000.22 823.37 1000.53 828.05 1000.61 825.73
4 0 1 2000.26 1657.18 2000.64 1647.43 2000.12 1650.77 2000.14 1653.93
8 1 2 2000.28 1656.08 2000.10 1646.74 2000.20 1650.55 2000.25 1653.28
13 2 3 2000.03 1655.83 2000.14 1646.11 2000.17 1650.26 2000.23 1652.52
17 3 0 2000.25 1659.75 2000.36 1650.23 2000.51 1653.89 2000.04 1656.51
電池配置パターン slot0に入ってる電池 slot1に入ってる電池 slot2に入ってる電池 slot3に入ってる電池
0 電池0 電池1 電池2 電池3
1 電池1 電池2 電池3 電池0
2 電池2 電池3 電池0 電池1
3 電池3 電池0 電池1 電池2

前項までの説明では、充電容量は2000mAhとしましたが、本充電機の性格上、ぴったりとやめるのは無理なので、その測定値を示しています。
また、見てわかるとおり、2000mAhのテストの間に、1000mAhのテストを2回づつ行っています。

なお、この結果を受けてevoltaでテストした際は、すべて2000mAhで行いました。(2000mAhのテストのほうが格段にテストによるバラツキが少ないことが分かったので。)。また、ずらし方を変えてのテストも含め19ケース行いました。(したがって全ケース数は36です。)
(細かいこと言うと、evoltaの1回目の充放電データは、不活性化の影響かバラツキがひどかったので、捨てましたので、ケース数は35です。

さて、ここから、この数値を加工して、次節の回路間偏差を得るのですが、この内容は、ざっくりと省略します。
理屈は、前項で述べたとおり。


4.結論!回路間偏差

いきなり、最終的な結論値です。

回路間偏差

回路間偏差 0 1 2 3
充電スロット偏差 0.027% 0.039% 0.096% -0.162%
放電スロット偏差 0.238% -0.396% 0.092% 0.065%

回路間の偏差は、例えば放電回路の偏差は、-0.396%から0.238%になっています。
これは、2000mAhの電池を放電すると、-8mA〜5mAの誤差が出ることを示しています。

また、充電回路の偏差より、放電回路の偏差がかなり大きいことを示しています。
これは、1Ωの抵抗の2本並列か、8本並列か、という、直接測定に利く部分の差が大きいことを示しています。
充電回路のなかで、slot3の偏差が飛びぬけて大きく、低い数字となっているのは、slot4の充電電流が高めであることが原因かと思います。
(充電電流の一例: slot0: 2152mA, slot1: 2140mA, slot2: 2160mA, slot3:2240mA)

次に、ついでに計測したに近い、電池の充電効率偏差です。

電池充電効率偏差 0 1 2 3
eneloop-Rセット2 0.009% -0.014% 0.001% 0.004%
充電式evolta 0.010% -0.012% -0.008% 0.010%


電池充電効率偏差については、非常に少ないことが分かります。この方法でのスロット間偏差を求めるにあたっての誤差(後述しますが、標準偏差にして、0.021%とか0.026%。)より少ないので、、、」、ととらえてもいいように思います。(後述する、信頼区間の話も参照。)

この計算値の妥当性はどうでしょうか。
ということで、回路ごとの乖離率を、各実験の結果に当てはめて補正し、補正後の値を調べてみました。

まずは、eneloop

eneloopでの回路ごとの測定値乖離率と、補正後測定値の乖離率
標準偏差 最小 最大 2000mA実験のみの標準偏差
測定値乖離率 0.242% -0.431% 0.295% 0.236%
  2000mAh換算 4.83mAh -8.61mAh 5.90mAh 4.72mAh
補正後測定値の乖離率 0.021% -0.075% 0.086% 0.012%
  2000mAh換算 0.42mAh -1.49mAh 1.71mAh 0.25mAh

2000mAhの電池を放電するのに、回路間の偏差も含めた測定誤差は4.83mAh(標準偏差)だったものが、回路間偏差を加味すると、0.42mAhの誤差(標準偏差)ですむことを示しています。
いや、われながら、巣晴らしい!
なお、2000mAh実験に限って言えば、0.25mAhの差ですむことを示しています。


#ということは、2000mAhだけで測定したほうが、素晴らしい値が出たのではないか、と思い、evoltaの実験では2000mA実験のみにしましたが、、

次に、充電式evolta

evoltaでの回路ごとの測定値乖離率と、補正後測定値の乖離率
標準偏差 最小 最大
測定値乖離率 0.232% -0.416% 0.310%
  2000mAh換算 4.63mAh -8.33mAh 6.20mAh
補正後測定値の乖離率 0.026% -0.055% 0.053%
  2000mAh換算 0.52mAh -1.10mAh 1.10mAh

ほぼ同じような値がでてますね。

#さっきの続きで言うと、補正後測定値の乖離率は、2000mAhにしたことで、改善はされませんでした。
#これは、放電末期に、eneloopのほうが電圧がストンと落ちるため、正確な値が測定できることが原因かと思います。
#じゃあ、eneloopで、この実験繰り返せばどうだろう。と思いますが、今回は、こんなもんにしといたろ!


ちなみに、eneloop-R実験、evolta実験の両方あわせたときの補正後測定値乖離率の標準偏差は、0.0237%です。
テストケースが35で、4スロットを測定しているわけですから、補正後測定値乖離率の95%信頼区間は、
   ± 1.96 × 0.0237% ÷ √140 = ± 0.039%
 で、これは、2000mAh換算で、
   2000mAh ± 0.79mAh
となります。
#細かいことを言うと、誤差の大きい1000mAh実験と、誤差の少ない2000mAh実験が混じっているので、2000mAhのものを測定
#する場合には、信頼区間は短くなります。
#また、この信頼度は、eneloopとevoltaで異なります。eneloopで測定する場合は信頼区間は短くなります。



5.eneloopとevoltaの容量のばらつき

上記で得られた結論の再掲。

回路間偏差

回路間偏差 0 1 2 3
充電スロット偏差 0.027% 0.039% 0.096% -0.162%
放電スロット偏差 0.238% -0.396% 0.092% 0.065%

これを、実際に寸止め充電して電池の充電できた容量、それに続いて放電できた容量に適用します。

まずは、半年間普通に使ったeneloopのリフレッシュ実験をした時の、4回続けて充放電したときの充放電計測結果にあてはめてみましょう。充電スロット偏差を充電結果に、放電スロット偏差を放電結果に適用します。

充放電容量測定値(mAh) 補正後充放電容量(mAh) 補正後充放電容量乖離率
状況 slot0 slot1 slot2 slot3 slot0 slot1 slot2 slot3 slot0 slot1 slot2 slot3
41日ぶりに追い充電 充電 336.8 339.0 347.9 337.0 336.9 339.2 348.2 336.5 -0.97% -0.30% 2.37% -1.09%
上記完了後、30分
の休憩ごとに充放電
放電 1788.1 1772.1 1784.1 1784.2 1783.8 1779.1 1782.5 1783.0 0.10% -0.17% 0.02% 0.05%
充電 2257.2 2254.3 2251.1 2263.3 2257.8 2255.1 2253.3 2259.6 0.06% -0.06% -0.14% 0.14%
放電 1832.0 1818.0 1826.0 1830.9 1827.6 1825.2 1824.3 1829.7 0.05% -0.08% -0.13% 0.16%
充電 2260.3 2259.5 2253.4 2263.2 2260.9 2260.4 2255.5 2259.6 0.08% 0.06% -0.16% 0.02%
放電 1829.4 1816.7 1823.2 1827.1 1825.0 1823.9 1821.5 1825.9 0.05% -0.01% -0.14% 0.10%
充電 2255.3 2253.0 2246.9 2256.4 2255.9 2253.9 2249.0 2252.7 0.13% 0.05% -0.17% -0.01%
放電 1827.4 1814.6 1821.0 1824.5 1823.1 1821.8 1819.3 1823.3 0.07% 0.00% -0.14% 0.08%
充電 2250.2 2250.8 2244.6 2254.1 2250.8 2251.6 2246.8 2250.5 0.04% 0.08% -0.14% 0.03%

#1行目の充電データは、追い充電なので、無視してもらって、  →とはいえ、不活性化や自己放電のバラツキデータとしては使えますが、
#2行目の放電データも、不活性化が戻っていないので無視。  →とはいえ、1回で回復! えらい!

3行目以降のデータが、電池のバラツキ特性を現しています。
「確かに有意な、電池間の、容量偏差が測定できた。」ということかと思いますが、eneloopの容量はかなり揃っているといえます。これが一番の収穫。

具体的には、充電時に得られたデータ、放電時に得られたデータ共に、
 slot2の電池が、一番容量が少なく、0.15%、つまり、2.6mAh容量が少ない。
 slot0の電池が、一番容量が多く、0.07%、つまり、1.2mAh容量が多い。
ということです。

なお、測定回ごとの同一スロット内でのバラツキ(標準偏差にして、slot1とslot3が大きく0.06%あります。)が先ほどの実験においての補正後乖離率の標準偏差(0.0237%)より大きいですが、これは、サンプル数(充電4、放電3)の不足、このリフレッシュを行った時の温度の問題、寸止め満充電が残り容量をそろえることの限界、のいずれかはわかりません。

また、ここでも、充電時に充電できた容量が放電時の容量を決める、のがわかると思います。逆に言うと、電池ごとの充電効率はほぼ同じ、と。
(測定回ごとのバラツキに、埋もれかけていますが、確かに傾向は読み取れると思います。)

次に同様のデータをevoltaで。

充放電容量測定値(mAh) 補正後充放電容量(mAh) 補正後充放電容量乖離率
状況 slot0 slot1 slot2 slot3 slot0 slot1 slot2 slot3 slot0 slot1 slot2 slot3
購入後4回目充電
(3回充放電後30分休憩)
充電 2373.7 2357.4 2345.4 2334.3 2374.3 2358.3 2347.6 2330.5 0.92% 0.24% -0.22% -0.94%
30分休憩後放電 放電 1917.0 1892.9 1895.7 1878.8 1912.5 1892.9 1895.7 1878.8 0.92% -0.11% 0.04% -0.85%

slot0が他電池との対比で、0.92%(約17mAh)容量の多い電池、slot3が0.85%か0.94%(約17mAh)容量の少ない電池、ということですね。
eneloopよりかなりバラツキが多いといえましょう。eneloopで、あれやこれや、理屈を書きましたが、それを遥かに超えるバラツキがあります。


6.まとめ

本測定により得られた補正データを使い、同時に充放電したデータを使って、電池間の容量のバラツキを、
 測定ごとの誤差としては、標準偏差として0.237%、信頼区間としては、0.39%のレベルで、つまり、
 2000mAhの容量を測定するとして、誤差の標準偏差を、0.47mA、信頼区間は±0.79mAh(信頼区間95%)
で補正できることが分かりました。

ただし、上記の0.47mAh、±0.79mAhという精度を適用するには注意が必要で、
  「2000mAhの測定をeneloop-Rのようなストンと落ちる電池で測定する(という誤差の少ない条件を大前提にした)とき」の
  測定値の誤差であり、信頼区間であること。(その条件の中で、evoltaや、1000mAh実験も混ぜた結果なので、悲観的な数値ではあります。)
  (繰り返しですが)あくまで、同時に充放電した電池間にしか使えない補正値であること。
  秋であり温度が涼しく、安定している時期に測定した補正値であること。
まあ、eneloopの電池間の、有意な電池間偏差が、1〜2回程度の実験でなんとか見極められる程度、というのは、ちょっと悲観的な言い方かな?

eneloop-Rがevoltaに比べ、かなり電池間の容量差が少ないことも分かりました。
特に、懐中電灯のような、放電停止電圧が設定されていない機器で使う場合は、電池の容量のバラツキは、即、転極につながるので、そのような機器を使う場合は、今のところは、eneloopを使ったほうが電池の寿命という点では、お得だと思います。一方、容量が揃っていれば、転極はあまり起きません。(他の電池も同様に起電力が低下してゆくために転極しない。)

ただ、実験に使用したevoltaは、初期ロットに近いと思われるので、evoltaは、これからですね。